北村わさびについて

湧き水の恩恵

湧き水の恩恵

 私どもは、兵庫県の北部、神鍋高原の麓でわさび農家を営んでいます。70~2万年前の神鍋火山群の噴火により、この土地には「湧き水」という大きな恩恵がもたらされました。その水量は毎秒700ℓにも及び(十戸の滝を除く)、水温は通年で13℃前後とほぼ安定しています。この水は『十戸の清水』として知られ、古くよりこの地区の暮らしや産業を支えてきました。民家を縫うようにあちこちに水路が流れ、各家には「川いと」と呼ばれる洗い場が設置されています。また、わさびの栽培、ニジマスの養殖、米作りなど「食」の生産に利用されてきました。

300年の歴史

300年の歴史300年の歴史

 私どもは、その水源から広がるわさび田を代々受け継いでいます。「もともと沼地であったが、村人の協力によってわさび田に開墾された」と伝えられています。周囲の丘から溶岩石を採取、加工し、すべて人力による手作業で現在の33アールまで拡張しました。自宅裏の平坦地に広がるわさび田は他には例がなく、標高80mに位置することから、「日本一海抜の低いわさび田」とも言われています。栽培の歴史は古く、江戸時代にまでさかのぼります。享保年間(1716~1736年)の中頃より栽培し、「久美浜の領主に献納していた」という記録が残っています。

種を継承する

「種」を継承する「種」を継承する

 わさびは日本原産の植物であり、古来より山々に自生し、古くより各地で栽培されてきました。私どもは、「ダルマ種」をもとに60年ほど自家採種しながら、この土地の湧き水や気候風土に合ったわさびを受け継いでいます。苗も独自の方法により自家生産しています。また、近年は地球温暖化に対応した種苗の導入も進めています。溶岩の石ころに根を張り、わさびは流下する湧き水だけで育ちます。種まきから収穫までには約2年かかります。春になるとわさび田は真っ白い花で満開となり、5月下旬に紫色に膨らんだサヤを採り、種を保存します。

ふるさとの風味を守る

 神鍋高原には、火山灰からできた「黒ボク土」が分布しており、美味しい高原野菜が栽培されています。また、環境に優しい食味豊かな米作りも広がっています。広葉樹が広がり、豊かな自然林も残されています。神鍋の大地に浸透した水が移動して、この土地で湧き出す。わさびの風味は、豊かな森林や里山の営みによってもたらされています。

ふるさとの風味を守る

 神鍋はススキの名所としても知られています。わさびは強い日差しを嫌うため、天井には遮光ネットを張りますが、1970年代まではこのススキを利用していました。高原から刈りとり、乾燥させ、冬には家族総出で「日覆い」を編んでいました。

ふるさとの風味を守るふるさとの風味を守る③

 わさびは日本固有の食文化に根ざした香辛料として古くより親しまれてきました。神鍋の自然、先祖伝来のわさび田、そして、小さな農家を支えて下さる皆様に感謝しながら、これからもこの土地ならではの風味をお届けいたします。

わさび農家 北村わさび

北村宜弘(Yoshihiro Kitamura)

兵庫県豊岡市日高町十戸248

TEL:090-9983-7987
MAIL:info@kitamura-wasabi.com

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